住宅の外皮平均熱貫流率(UA値)と冷房期の平均日射熱取得率が求められたら、次は一次エネルギー消費量に
ついて説明します。。
その前に・・・
ZEHロードマップ、3・ZEHの定義(定量的な定義)を復習します。
3-1「ZEH」
①強化外皮基準(1から8地域のH25年省エネルギー基準※1のを満たしたうえでのUA値(外皮平均熱貫流率)
・1,2地域:0.4(W/㎡K)相当以下。
・ 3 地域:0.5(W/㎡K)相当以下。
・4~7地域:0.6(W/㎡K)相当以下。
※1この基準値は今後変わる可能性(もっと低くなる)があります。
でなければいけません。求めた外皮平均熱貫流率(UA値)が住んでいる地域の定められている数値以下でないと
ZEHの条件を満たすことができません。
プラス、冷房期の平均日射熱取得率にも定量的な定義があります。
冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)の基準。
・地域区分1~4地域:基準値なし。
・地域区分 5 地域:3.0以下。
・地域区分 6 地域:2.8以下。
・地域区分 7 地域:2.7以下。
・地域区分 8 地域:3.2以下。
でなければいけません。求めた冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)が住んでいる地域の基準値以下でないと
ZEHの条件を満たすことができないのです。
☆この数値以下にならない場合は、現段階で選定している断熱材や窓、ドアの断熱性能を上げなければ
いけないのです。断熱材の熱貫流率の低い断熱材に変更する、窓やドアの熱貫流率と日射熱取得率の
低いものに変更するなどの対応をしなければいけません。
☆特に気にする部位は、窓、ドアになります。
・窓、ドアの熱貫流率と日射熱取得率
部位別仕様表の別表1を見ると、屋根、天井、外壁、床、基礎の仕様の詳細で熱貫流率を求めることができます。
部位の仕様の詳細(基礎の断熱なし以外)を満たせば得られる熱貫流率はどれも1以下です。
例えば・・・住んでいる地域区分が5の場合は外皮平均熱貫流率(UA値)は0.6以下です。条件を満たすうえで、
0.6より数値の高い仕様を選んでしまうと、全体の平均熱貫流率は0.6以上になる可能性が非常に
高くなってしまいます。
窓、ドアに関しては、この部位別仕様表・別表7の一番性能の良い状況にしたとしても、1.6以下の
数値にはならないのです。
同様に、日射熱取得率も地域区分5は0.3以下にしなければいけないので、0.3以上の条件の窓や
ドアを選ぶと数値は結構苦しい状況になります。
部位の全体の熱損失量や、日射取得量を外皮総面積で割るので、数値以上のものを選んでも、他の部位で
かなりの断熱性能の良いものを選んでいれば、基準値以下になる可能性はあります。
※実際計算してみて感じたことは、この基準値以下にすることはとても大変でした・・・。
以上の基準値を満たしたら、一次エネルギー消費量に進みます。
一次エネルギーとは・・・
・石油、石炭、天然ガス、太陽熱、太陽光、水力、地熱、風力など、自然から得られるエネルギーのことです。
この一次エネルギーを加工、変換したもの(電気や都市ガスなど)が二次エネルギーとなります。
・ZEHに関する一次エネルギーとは、上記の二次エネルギーに関する部分となります。
☆ZEHの定義
1・再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減。
2・再生可能エネルギーを導入。
3・再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減。
とあります。この再生可能エネルギーとは、現段階では太陽光発電設備のことです。
1・について。
「基準一次エネルギー消費量」とは、ZEH化したい住宅の基準となる一次エネルギー消費量のことです。
つまり、それぞれ住宅は大きさも形も、建っている場所も向きもさまざまです。部屋の数も違います。
そのため、それぞれ異なる住宅でも基準となる一次エネルギー消費量がわからないといけません。
「基準一次エネルギー消費量」がわかったら、そのエネルギーの2割以上の削減をしなさい。ということです。
2・は太陽光発電設備を導入してください。ということです。(システム容量は問いません)
3・は太陽光発電設備のエネルギー量(発電量)を加えて基準一次エネルギー消費量から100%以上のエネルギー
消費量の削減をしなさい、ということはどういうことでしょう。3・の文言の対象は1・と同じ基準一次
エネルギー消費量です。太陽光発電設備のエネルギー量(発電量)を加えて100%以上にするということは
導入した太陽光発電設備のエネルギー量(発電量)が基準一次エネルギー量より多くないといけないと
いうことになります。
つまり、2・で太陽光発電設備のシステム容量の定めはありませんが、対象となる住宅の基準一次エネルギー量
より同じ量か、それ以上の発電量がないとZEHの定義を満たすことができません。住宅の立地条件や屋根面積により、最大の発電システムを組んだとしても、ZEHにならない住宅のために、Nearly ZEH(ニアリーゼッチ)が
あります。
※Nearly ZEHは・・・
再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量から75%以上の一次エネルギー消費量削減。で良いのです。
そして、上記に示す一次エネルギー消費量は、住宅すべてのエネルギーではなく、4つの設備に限られています。
・冷暖房設備に使用されるエネルギー消費量。
・照明設備に使用されるエネルギー消費量。
・換気設備に使用されるエネルギー消費量。
・給湯設備に使用されるエネルギー消費量です。
※つまり、上記4つ以外で使用されるエネルギーは含まれてないのです。例えばコンセントで使用される家電、(テレビ、冷蔵庫、 洗濯機、IHクッキングヒーター、ドライヤー等。)
☆住宅におけるエネルギー消費量の割合(2013年度)
・冷暖設備は全体の2.2%、暖房設備は全体の25.3%。
・照明設備、換気設備他は全体の36.1%。
・給湯設備は全体の27.6%です。
4つの限られた設備のうち、暖房設備と給湯設備は全体の2割以上を占めています。照明設備+換気設備も
全体の3割以上を占めています。そのため、この4つの設備のエネルギー消費量を削減しようとなりました。
☆対象の住宅の設計する一次エネルギー消費量は、基準となる一次エネルギー消費量より小さい状態。
つまり・・・「基準一次エネルギー消費量≧設計一次エネルギー消費量」ということです
まとめ・・・
・ZEH化する住宅、ZEH化しようとする住宅とZEH化しない住宅、ZEH化されていない住宅があります。
ZEH化しない住宅とされていない住宅で使用される4つの設備(冷暖房・照明・換気・給湯)の
エネルギー消費量が「基準一次エネルギー消費量」です。
・ZEH化する住宅とZEH化しようとする住宅は、その基準となる「基準一次エネルギー消費量」より20%削減
されたエネルギー消費量を設計しなければいけない。それが「設計一次エネルギー消費量」になります。
・そして、設計した一次エネルギー消費量で削減された分のエネルギー消費量を太陽光発電設備を導入することに
より、プラスされることが出来れば、買わなければいけなかった今までの電気量を大幅に減らすことができる。 ということにつながります。
我が国が抱えているエネルギー消費の問題が、ZEH化により少しでも解決していくことができるのです。
☆住宅に限らず、ビルや工場や各施設。それら一つ一つの使用されるエネルギーが、高断熱、高効率機器を
導入してその建物の性能を上げることにより、今までより少ないエネルギーで十分満足できる状態にする。
そしてその少ないエネルギーで良くなった建物が太陽光発電設備等の再生可能エネルギーを使用することで
必要なエネルギーを賄うことができれば、日本のエネルギー問題が大きく変わることに繋がるのです。