平成29年度のZEH支援事業
前年度の支援事業として継続的に国が補助金を出して推進していく内容ですが、いくつか内容が変わっています。
1.補助対象住宅
・交付要件を満たす住宅で一戸あたり定額75万円(地域区分、建物規模によらず全国一律)
2.蓄電システム
・補助対象として採択されるZEHに蓄電システムを導入する場合の補助金額。
蓄電システムの補助額:初期実効容量1KWhあたり4万円。
蓄電システムの補助上限額:補助対象経費の1/3または40万円のいずれか低い金額。
3.環境共創イニシアチブ(SII)に登録されたZEHビルダーによる申請
・平成28年度に登録を受けたZEHビルダーで実績報告書の提出されたZEHビルダー。(未提出業者はダメ。)
※ZEHビルダーでない業者での申請は認められないということです。
☆弊社は既築住宅のみのZEHビルダーで、今年度も継続で登録されました☆
既築住宅の交付内容の変化
・ZEH申請結果のページでも報告しましたが、28年度は採択件数6,320件に対して既築住宅は0件でした。
既築住宅でZEHにしている住宅が1つもないということではなく、補助金を受けられなかった件数です。
交付要件を満たすことができないが、ZEH化されている既築住宅は存在します。
・広く普及させる目的での補助金ですので、新築、建売は今後も多く採択されるでしょう。課題は既築住宅です。
補助金
・補助金についての考え方はそれぞれ違うと思います。補助金を受けられないのであればやらないという方も
いらっしゃると思います。それでは今後ZEHに関していつまで補助金が出るのでしょうか?
・ZEHの普及方策では、国が補助金を出すのは2016年度までの予定でした。その後は必要に応じて限定的な延長
となっております。ということは、今年度(平成29年度)は限定的な延長期間ということになります。
そして限定的な延長期間は2018年度まで(平成30年度)で終了の予定となっております。
・2030年までの目標がある政策ですが、国から補助金が出るのは今年を入れてあと2年あるか?ということ。
そして、1年中公募しているわけではないこと(予算額終了で公募終了)。
☆補助金が出る出ないではなく、ZEHの自律的普及、住宅のZEH化が目標なのです。
既築住宅のZEH化
・補助金を受ける要件の中で、既築住宅にとって厳しい内容がいくつかありました。新築住宅、建売住宅では
設計段階で検討することができる、ZEHを商品化することができるのに対し、既築住宅は今あるものを取替え
たり、新しいものに変えなければいけないのです。
・例えば、断熱性能を上げるうえで窓、ドアの交換が検討されます。弊社は窓、ドアの専門業者に交換の見積もり をしていただき、工事費込みで約150万円になりました。この時点で28年度の補助金額の上限になります。
・外皮の断熱性能を上げるにはあと天井、壁、床が含まれます。それらを一度壊して、新しくやりかえるのです。
取り壊しにかかる費用、壊す必要のない部分の保護(養生)、産業廃棄物の処理等が含まれるのです。
・外皮の断熱性能が要件を満たしたら、次は太陽光発電設備導入、高効率設備の交換となります。まだ使える
リビングのエアコンも新規に交換しなければいけないのです。
★弊社が申請した住宅は自宅です。不採択でしたので、太陽光発電設備、蓄電池、HEMSまでやりました。
正直採択されて補助金を得られたとしても、予算内ではZEH化することはできなかったと思います。
快適な住宅を得る前に、家庭が崩壊していたかも?と感じています。
実務者の声(SII:ZEH支援事業調査発表会2016より)
1.既築住宅のZEH化は新築住宅よりも改修部分の選択と断熱仕様の選択が難しく、外皮計算及び申請書作成等
が複雑。
2.既築住宅の全体改修工事では、外皮の断熱工事、高効率設備の導入、太陽光発電システムの導入など、
ZEH改修工事費用が新築の85%程となり、顧客の予算との調整が難しい。
3.ZEH支援事業は平成26年度補正事業から定額補助になったため、改修費用の自己負担額が大きくなり、
補助金の利用は申請書作成の手間等がかかるため積極的には進められない。
4.既築住宅の断熱改修は多数受注するが、ZEH仕様に達するほどの断熱仕様ではない。ZEH仕様にするためには 断熱材や開口部の仕様をさらに上げる必要があり、一般的な断熱工事と比較して約2倍(坪単価約6万円程度)
の掛かりまし費用が発生する。
5.顧客のリフォームの優先順位は、外装・キッチンや浴室などの住宅設備・エアコンや給湯器などの設備交換
バリアフリー等であり、内窓設置程度の断熱工事以外は、費用対効果の理解が得られないことが多い。
☆既築住宅をZEH化するには「全体改修工事が前提となることから高額なリノベーション事業となる」との
声が多い。・・・・という内容でした。
その他の動向(新築・建売住宅)
・2016年度でいえば約40万戸が建てられており、大手ハウスメーカーによるものが約8万戸、残り約32万戸を
地域の工務店等が手掛けている。つまり全体の約2割が大手ハウスメーカー、約8割は地域の工務店等になる。
・約40万戸のうちの約5万戸がZEHでそのうち約1万戸が工務店などが施工している。
つまり約35万戸の新築住宅はZEHではなく、全体の約12.5%がZEHで約10%が大手ハウスメーカーになる。
・2015年の経産省の補助金を使ったのは大手ハウスメーカーが約5,500戸、残りの約600戸が工務店他になる。
つまり5万戸のZEH住宅のうち補助金を使用した住宅は約12%の約6,100戸、その中で約90%が大手ハウス
メーカーです。約4万戸は補助金を受けないでZEH化したことになります。
☆☆補助金に対する考え方を変える必要があると思います。☆☆
※考え方、感じ方は人それぞれです。その中で弊社は補助金はくじみたいなもので、それも全体の費用に比べれば
ほんの少し得をした程度では?と思います。それよりももっと大切なことはZEH化された住宅で、快適に
過ごすこと、コストを抑えること、エネルギー問題に貢献できていることでは、と思います。
※国からの補助金のほかに、各地方自治体の補助金もあります。受けられるものに対しての努力は惜しまず、
しかし本来の目的は補助金ではない、と感じることだと思います。
弊社の今後の目標、取組み
・ZEHビルダーとして求められることへの対応は当然ですが、ZEH化への取組は補助金を得られる条件の中でも
既築住宅にとって非常に条件が厳しいところもあります。
1.既存戸建住宅は住宅全体の断熱改修を含み、導入する設備は原則としてすべて新たに導入すること。
2.交付決定から事業完了期間が約5か月間であること。
※この2点に着目したとき、補助金申請だけのために急いですべてのことをやることは、既築住宅のZEH化は
厳しいと考えていましたが、いずれ補助金もなくなるし、現段階でも新築住宅の約9割はZEHでも補助金を
得られていないのであれば、時間をかけて少しずつZEH化に向けて取り組む方向はどうだろうと考えました。
☆断熱改修する部屋、そのままの部屋、新しい設備を導入する?しばらく様子を見る、太陽光発電設備を導入する
ことにより、実際のエネルギー使用量の変化を知る、それから検討する。。。などすべてを一気に終わらせず、
お客様側にも考える時間、経験してもらう時間が必要ではないかと思います。
☆太陽光発電設備導入は必須条件ですが、どこまで省エネにつながり、光熱費の削減になるのか?そして、
断熱効果を加えると、さらにどんな効果が得られるのかを少しずつ進めていくことが大切だと思います。
☆導入する設備が原則としてすべて新品を導入することも、一つずつ進めていくことで予算組みもしやすくなるし
無理をしない程度で進めることもできます。商品の価格も下がってくるはずです。
そもそもZEHの浸透がまだ広がっていない状態の中で、高額な費用がかかる既築住宅のZEH化のすべてを完了
させること自体も施工側にとっては危険な状態だと思います。データの中で良い結果になることは裏付けられて
いても、生活スタイルや家族構成はそれぞれ違います。その結果思いもよらないトラブルに発展する可能性もあるはずです。太陽光発電設備の良ささえ浸透していないわけですから。
国が進める政策に、企業が向き合い行動することは大切ですが、直接な影響を受けるのはお客様です。
その部分を重要に考えるのであれば、ひとつひとつの説明とご理解、提案、ご要望があってお客様の満足に
繋がるのです。ほとんど使用しない部屋に断熱性能の良い改修や高効率設備の導入は必要ない!と決めるのは
お客様です。
そして、各メーカーが素晴らしい商品を次々に商品化しております。商品を選ぶ時間も必要です。
まとめ
・既築住宅のZEH化の改修は時間が必要です。改修部分を限定する工程を組むことにより、お客様の希望の
ペースで進めることも可能です。そして検討する時間があれば、電気設備の改修も同時にできてしまいます。
・弊社はZEHビルダーであり、電気工事業者です。生活に必要な電気設備を自由に設計することができます。
改修したあとに、「コンセントがほしかった~・・・」とか「テレビを見れるようにすればよかった~・・・」
などレイアウトの変更も一緒に行ってZEH化すれば、さらに希望の生活スタイルに繋げることになります。
☆お客様側に立って、今年度のZEH事業を進めていきたいです。